PC Parts
PCパーツ高騰、DRAMは1年で3倍以上に 寡占・AI優先で品不足
Nikkei Online, 2026年3月7日 2:00

パソコン(PC)のパーツ価格が高騰している。家電量販店や専門店などでは、2025年の1年間で3倍以上に値上がりするパーツも出てきた。米国・韓国などの企業による市場寡占と、各社の人工知能(AI)データセンター向けの供給優先といういわば「二重苦」が、一般消費者向けの製品不足と価格上昇を引き起こしている。
調査会社BCN総研(東京・千代田)によると、ばら売りされている主要パーツのうち、2025年の1年間で店頭価格が最も値上がりしたのはメモリー(DRAM)だった。25年12月は3万1500円で、前年同月から3.4倍に上昇した。

データ保存に使う記憶装置のソリッド・ステート・ドライブ(SSD、40%高)やハードディスクドライブ(HDD、74%高)も値上がりが目立った。モニターに映像を出力するグラフィックボードは24%上昇した。
「ちょっと高すぎませんか」。都内のPCパーツ店に足を運んだ男性はDRAMの値段を見て「手が届かない」と肩を落とした。前の世代のものを購入した。
上昇の理由は「円安、物流費増など複合的な要因が絡む」(大手家電量販店)という。いずれも少数企業が市場を寡占し、AI向けに供給を優先しているという共通項がある。
例えば、主要パーツで最も高額なグラフィックボードは、米エヌビディアが他社を圧倒する。同パーツには、同社が得意とする画像処理半導体(GPU)を搭載する。
エヌビディアの主力市場はデータセンターで、25年11月〜26年1月期の同部門の売上高は同社全体の約9割を占める。「消費者向けは利益率が低い。需要が強く安定した高収益が見込めるデータセンター向けに力を入れている」(エレクトロニクス商社)
DRAMも米マイクロン・テクノロジーなど大手3社が市場シェアの9割超を握る。各社は高利益率でAIの駆動に使う積層型のDRAM「広帯域メモリー(HBM)」などの生産を優先するため、消費者向けの供給を絞っている。
複数の関係者によると、家電量販店では「北海道苫小牧市に国内最大級のデータセンターを建設しているソフトバンクなどから大量に注文が入り、在庫が品薄になった」もようだ。
SSDの上昇は「マイクロンが2月に消費者向けメモリーの出荷を終了した影響が大きい」(ヨドバシカメラ新宿西口本店の山崎惇氏)。内蔵SSDの2テラ(テラは1兆)バイト品は足元で8万円前後と、1年前(2万3000〜2万4000円)から値上がりしたという。
あおりを受けているのは消費者だ。HDDは従来から、一眼カメラで撮影した写真やPCのデータを保存するといった利用も多い。「HDD不足が死活問題のユーザーもおり、駆け込み購入している」(大手家電量販店)。都内のあるPCパーツ店は、HDDなどの購入に個数制限をかけた。市場では「企業と違い、AIはたまに使えればいいという消費者もいる」との声もある。
PCパーツ店のドスパラを運営するサードウェーブ(東京・千代田)の永井正樹社長によると、「PCパーツやPC本体の値上がりを受けて下取り価格も上昇。買い替え時に下取りを利用する顧客が増えている」という。
今後も「企業のAI投資の情勢が大きく変わるとは考えにくく不透明感が強い中、いったん足元の価格が『通常価格』になる可能性もある」(同)とみている。
(井沢ひとみ)
