Source: Nikkei Online, 2025年4月29日 2:19
【ラスベガス=清水石珠実】米IBMは28日、今後5年間で米国向けに総額1500億ドル(約21兆円)を投資すると発表した。注力している量子コンピューターに加え、政府や企業の業務に使うメインフレームと呼ばれる大型コンピューターの米国産強化などに振り向ける。
「米国第一」を掲げるトランプ米政権に意向に沿って、米国内の製造業への貢献や雇用の拡大を表明する企業が増えている。今回、IBMも巨額を投資するとの計画をまとめて、政権にアピールする格好だ。
投資規模や内訳について詳細は明らかにしていない。声明のなかで、代表的な分野として量子コンピューターとメインフレームを取り上げた。総額1500億ドルのうち、300億ドル以上を量子コンピューターとメインフレームの研究開発、技術力の向上に振り向けると説明した。
アービンド・クリシュナ最高経営責任者(CEO)は声明のなかで「114年前の創業以来、IBMは米国の雇用と製造業に注力してきた」とアピールした。今回の投資を通じ、米企業であるIBMが「世界最先端のコンピューティングと人工知能(AI)分野の中心的存在であり続けることができると確信している」とも述べた。
IBMは23日に2025年1〜3月期決算を発表した。売上高は前年同期と比べほぼ横ばいの145億4100万ドルにとどまった。企業向けのAI事業は好調だったが、コンサルティング向けのビジネスが低調で、メインフレーム分野も勢いを欠いた。
トランプ政権下で、米政府効率化省(DOGE)が政府機関の実質閉鎖や大型契約の見直しを進めている影響を受けた。ロイター通信は、IBMでも連邦政府関連で15件の契約が打ち切りになったと報じた。
米企業では、米国向け投資や雇用への貢献をアピールする動きが相次いでいる。米ウォルト・ディズニーは2025年度に映画やテレビ番組の制作などに230億ドル以上を費やし、その大半が米国向けであるとした。米アップルは2月、米国への投資や支出に今後4年間で5000億ドルを投じると発表した。