Next Gen. Technologies


AIや核融合の次に来るのは? 

経済産業省が育成に乗り出す6つの種


Source: Nikkei Online, 2026年1月25日 7:45更新


経済産業省が次世代技術のさらに先の「フロンティア領域」として6事業の実用化を後押ししようとしている。人工知能(AI)や核融合といった先進技術の後に登場し、日本の未来を担う「次の次の飯の種」(幹部)を基幹産業に育て上げようとする計画が動く。

「海洋ロボティクス」「海洋CDR」「天然水素」「量子センシング」「フロンティアマテリアル」「ブレーン・ニューロテック」――。

6つの新領域は日本が資源大国に生まれ変わり、脱炭素など地球規模の課題解決をリードする可能性を秘める。

このうち例えば、天然水素は文字通り、自然界にある水素のこと。水素は燃やしても二酸化炭素(CO2)を出さない燃料として注目されるが、水素自動車などで用いているのは人工生成したものばかり。製造コストは高い。石油や天然ガスのように採取する技術を確立できれば、いまより費用を下げられ、導入が加速するとみる。日本では長野県の白馬八方温泉で観測されている。

スキーリゾートとして知られる長野県白馬村の温泉地で天然水素が観測されている

海洋ロボティクスは深海に眠る鉱物資源の採取に使うことを想定している。政府は1月に入って日本の最東端の南鳥島沖で産業に欠かせないレアアース(希土類)を含む泥の試掘作業に着手した。現状では大量の採取には時間も資金も莫大にかかる。探査と掘削で劇的な変化を狙う。

海洋CDRは海水中のCO2を取り除く技術で、大気中のCO2濃度の低減にもつながりうる。英語のCarbon Dioxide Removalの略となる。政府が目標にかかげる温暖化ガスの実質排出ゼロに向けては、排出削減だけでなく回収も有効となる。排ガスなど気体からの回収で技術開発は進むが、CO2を大量に吸収し、地球表面の7割をおおう海からの回収法が軌道に乗れば、飛躍的な脱炭素を期待できるという。

量子の特性を生かした計測技術の量子センシングや、宇宙や深海など極限環境でも利用できるフロンティアマテリアル、人間の脳とデジタル機器をつなげるブレーン・ニューロテックを含め、実用化までには相当な困難が予想される。それでも経産省は経済安全保障上の重要性や革新性を考慮し、2026年中に懸賞金型の支援事業などを始動させ、育成に乗り出す。

「最先端の技術が生まれてから商用化までの時間が近年は短くなっている」。経産省の別の幹部は語る。こうした認識が同省の背を押す。

AIは17年に米グーグルの研究者らが論文で発表した技術が核となり、5年後には対話型AIとして急速に広がった。中核技術の誕生から普及まで10〜20年の期間があったパソコンやスマホより、社会実装までのペースは早まっている。

6つの種は成功の保証はなく、この先、全く別の技術が出てくる可能性もある。冒頭の幹部は「やめるべきはやめ、新しいものを取り入れることを繰り返す」と率直に話す。